胃がん

胃がんはピロリ菌による感染症由来の癌と考えられています。ピロリ菌

胃がんは早期発見で内視鏡などで治療しその後のQOLの改善が期待できる病気です。

胃癌のリスク因子

・ピロリ菌感染

・高濃度食塩の過剰摂取(可能性が高いのは食塩と高塩分食品、可能性があるのが燻製肉、焼肉)

予防因子

緑黄色野菜の摂取(可能性が高いのが野菜と果物、可能性があるのが豆類)

野菜や果物には、ビタミンCやカロチノイドなどの微量栄養素が多く含まれ、ビタミンCは発がん物質の生成を抑制します。ベータカロチンや緑茶に含まれるカテキンなども胃がんの予防効果が期待されています。

胃がん死亡の8割は65歳以上

これは、幼少年期にピロリ菌感染を受けた戦前生まれの世代が胃がんの発生しやすい老年期を迎えていることに理由があります。

そこでABC検診(胃がんリスク検診)を検討してみてください!

 

ABC検診

 

ヘリコバクター・ピロリ検査

ピロリ菌は胃の粘膜の中にいて胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを起こする細菌です。日本人は40歳以上では約80%の人がピロリ菌に感染しています。再発を繰り返えす難治性の胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になり、ピロリ菌の除菌でこれらの難治性潰瘍が治ることが知られています。また、ピロリ菌の除菌が胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの治療としてだけでなく、胃癌の予防につながることが注目されています。胃癌による死亡は年5万人にものぼりますが、この胃癌になるリスクはピロリ菌の除菌によって3分の1になることが明らかにされています。

ペプシノーゲン検査

ペプシノーゲン検査(ペプシノーゲン法)とは採血のみで簡便に行える胃癌の早期発見を目的とした検査法です。ペプシノーゲン検査は、血液中のペプシノーゲンを測定し、胃癌危険群である進展した萎縮性胃炎を見つけ、胃癌の早期発見を目的として開発された検査法です。

胃二重造影検査(バリウム検査)とは異なり、採血のみで簡便に検査が行えます。また、胃癌の危険因子である「進展した萎縮性胃炎」という前癌病変をスクリーニング出来る点でもすぐれた検査です。

この検査で測定するペプシノーゲンは胃で特異的に産生されるたんぱく分解酵素「ペプシン」の前駆体です。ペプシノーゲンには2種類のサブタイプ、ペプシノーゲンI(PGI)IとペプシノーゲンII(PGII)が存在し、PGIは胃底腺領域で産生され、PGIIは胃粘膜全体で産生されます。血清ペプシノーゲン値は幽門線側から口側に進展する胃粘膜の萎縮性変化を反映して低下します。

PGI値およびPGI/II比(PGIとPGIIの比)を指標として、胃癌危険群である進展した萎縮性胃炎を同定し、胃癌検診に開発されたのがペプシノーゲン法です。ペプシノーゲン法では、胃癌症例群と健常対象者群を比較検討した結果から、PGI70ng/dl以下かつPGI/II3以下が胃癌スクリーニングの基準となっています。

ABC分類 A B C D
ヘリコバクター・
ピロリ抗体
+ +
ペプシノゲン値 + +
胃がんの危険度
胃の健康度 健康な胃粘膜です。胃粘膜萎縮の可能性は低い。 少し弱った胃で、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などに注意。 弱った胃で、胃がんになりやすい。胃粘膜萎縮が進んでいます。 胃粘膜萎縮が進行し、ピロリ菌が住めずに退却した状態。
その後の管理・
対処法
逆流性食道炎に注意。 ピロリ菌を除菌する。 ピロリ菌除菌の徹底。定期的な内視鏡検査。 毎年、内視鏡検査が必要。
胃がん発生頻度 ほぼゼロ 1000人に1 500人に1 80人に1
ピロリ菌除菌 不要 必要 必要 要検討

胃がんリスク検診の結果について

胃がんリスク検診は、血清ペプシノーゲンとヘリコバクター・ピロリ抗体を測定し、胃がんの高リスク病変である萎縮性胃炎患者とヘリコバクター・ピロリ感染者を割り出し、胃がんのリスクに応じて内視鏡検査の頻度を変える方法です。ペプシノーゲン検査の結果とヘリコバクター・ピロリ抗体の組み合わせから、胃がんのリスクを次の4群に分けています。

  • A群:ピロリ菌陰性でペプシノーゲン検査が正常(PGI/II比>3)の方。ピロリ菌感染が無く胃粘膜の萎縮がない状態です。胃がんの発生するリスクはほとんどありません。胃内視鏡は5年ごとに受けることが推奨されています。
  • B群:ピロリ菌陽性でペプシノーゲン検査が正常(PGI/II比>3)の方。ピロリ菌感染がありますが胃粘膜の萎縮が進んでいない状態です。胃がんの発生率は一年間で1,000人に1人です。胃内視鏡を3年ごとに受けることが推奨されています。
  • C群:ピロリ菌陽性でペプシノーゲン検査が陽性(PGI≦70かつPGI/II比≦3)の方。ピロリ菌感染があり胃粘膜の萎縮が進んでいる状態。胃がんの発生率は一年間で400人に1人です。胃内視鏡を2年ごとに受けることが推奨されています。
  • D群:ピロリ菌陰性でペプシノーゲン検査が陽性(PGI≦70かつPGI/II比≦3)の方。この群は、胃粘膜の萎縮が進んでピロリ菌がすめなくなったためにピロリ菌抗体価が陰転したグループで、最も胃がんのリスクが高い状態です。胃がんの発生率は一年間で80人に1人です。胃内視鏡を毎年受けることが推奨されています。

 

ABC検診(胃がんリスク分類)は胃がんを診断する検診ではありません。

ABC検診は現在から将来の胃がんリスクを評価する検診であり、ABC検診で胃がんが見つかるわけではありません。胃がん発見のためには、画像診断による二次精密検査が必要です。

胃がんリスク検診

Aタイプ:健康な胃粘膜です。胃がんになる危険性は低いと思われます。

Bタイプ:ピロリ菌に感染しています。少し弱った胃粘膜です。一度、詳しい胃の検査を受けましょう。3年以内の間隔で定期的に胃の内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌は除菌しましょう。

Cタイプ:弱った胃粘膜です。ピロリ菌感染により、慢性萎縮性胃炎の状態と思われます。胃がんを発症するリスクが高いので、可能なら年に一度は胃の内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌は除菌しましょう。

Dタイプ:かなり弱った胃粘膜です。慢性萎縮性胃炎の状態で、ピロリ菌も生存できないぐらい胃が弱っている可能性があります。Cタイプと同様、胃がんを発症するリスクが高いので、毎年、胃の内視鏡検査を受けましょう。

ピロリ菌除菌後の方は、Eタイプ(除菌群)として、年に一度、定期的に内視鏡検査を受けることを推奨しています。というのは、ピロリ菌に長年感染していると、がんのリスクである慢性萎縮性胃炎になっていることが多いからです。

 

バリウム検査や胃カメラもやるのが嫌という方は、まずABC検査を受けて精密検査の必要があるかどうか検討してみてはいかがでしょうか。

ABC検診詳細ページはこちら