下肢静脈瘤

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何科に受診すれば?
血管外科を受診してください。血管外科を標榜しているところは少ないので外科でも構いませんが専門が心臓血管外科であるクリニックがより良いです。

どんな病気?
下肢静脈瘤を考えるときに静脈の構造で知っておきたいのが静脈弁です。
これは下肢から心臓へと血液が戻っていく際に逆流を防ぐためのものです。
下肢から心臓への血液の流れは重力に逆らう形となるのでこの弁によって逆流するのを防ぎ、正常に血液が流れるようにしています。
下肢の血流は筋肉がポンプの働きをして血流を押し上げ、弁が逆流防止になり、血液は上がっては止まり、上がっては止まりと繰り返しながら心臓へ戻っていきます。
下肢静脈瘤はこの静脈弁が正常に閉じなくなって血液が下に垂れてきてどんどん静脈が拡張し、その結果弁が次々と壊れてしまうことで起きます。
静脈弁

下肢静脈瘤になりやすいタイプ
1.性別
圧倒的に女性の方がなりやすい傾向があります。
理由としては妊娠を機に発症することが多いこと、ます女性の方が血管壁が柔らかいことなどが挙げられます。
2.生活環境
とくに注意したいのが長時間の立ち仕事。長時間立ちっぱなしでいると血液を心臓へと送り返す際に静脈弁に負担をかけ続けてしまい、壊れやすくなります。

下肢静脈瘤の主な症状

・だるさ、重さ
・むくみ
・かゆみ
・痛み
・こむら返り
・色素沈着
・潰瘍
・出血

下肢静脈瘤は合併症さえ起こらなければとくに深刻な状態をもたらす病気ではありません。
しかしその一方で見た目で悩みを抱えている人が多いようです。

下肢静脈瘤の見た目
赤く細かい血管が表面にところどころ見られるもの、青く血管が表面に1~2本程度が浮かび上がる比較的軽度なものから、ボコボコと太くなった血管が広範囲に走る重度なものまでさまざまなケースが見られます。
比較的軽度なものとしては「クモの巣状静脈瘤」と「網目状静脈瘤」と呼ばれるタイプです。
膝の裏やふくらはぎに生じることが多いのですが、太もも全体に広くできることも少なくありません。
また症状が出るようなものとしては大きなしこりができたり、皮膚がデコボコな状態になって目立つものもあります。
潰瘍と色素沈着も見た目の問題として厄介な症状です。
潰瘍は血流が滞ることによって血管が拡張し皮膚が薄くて弱い状態になってしまうことによって生じるもので、かゆみがでてかきつづけていると皮膚炎や潰瘍を起こしてしまいます。

下肢静脈瘤に痛みはありますか?
基本的に下肢静脈瘤が直接痛みをもたらすことはありません。
しかし、静脈瘤によって血液の流れが滞ると血栓が生じやすくなります。その結果痛みが発症するケースが多々見られます。
代表的なケースとして挙げられるのが表在性血栓性静脈炎です。炎症が生じた部分に熱が伴い、ズキズキと痛みが生じます。

下肢静脈瘤の代表的な症状として挙げられるのがむくみの症状です。
見た目にも非常に目立つため、大きな悩みの種ともなります。
むくみの原因は下半身は、重力に逆らって血液を流さなければならないため滞りやすいですが、そこに持ってきて下肢静脈瘤の場合、静脈弁に異常が生じて血液が逆流することによって生じます。
浮腫の予防には下肢を少し高くして寝る、弾性ストッキングをはいて予防するなどです。
ストキングは起きている時に履いて浮腫の予防をします。寝ている時は、体が横になっているので下肢の血液も心臓の方に返りやすい状態ですので寝ている時は無理にきついストッキングを履いて寝苦しい思いをしなくても構いません。
その他の症状として疲れやすさはもちろん、足がつりやすくなります。
これも足の血流が悪化し、うっ血状態に陥ってしまっていることが原因です。寝ている時にこむらがえりをよく起こす人は下肢静脈瘤を疑ってかかった方がよいでしょう。

治療
1.圧迫療法
下肢静脈瘤の治療を行った際には必ずといっていいほど弾性包帯による圧迫療法が行われます。
圧迫療法の方法としてはもうひとつ、弾性ストッキングの使用も挙げられます。

弾性包帯には他の圧迫方法にはないいくつかのメリットがあります。
圧力を調整することができる点。
関節部分の動きを調節しながら巻いていくことでより快適な使用が可能になります。
基本的には硬化療法などの治療を通院で行っている間は弾性包帯を使用し、ある程度症状が改善し、自宅で対策を行う段階になったらより手間がかからない弾性ストッキングに切り替えるという形をとるといいでしょう。

2.硬化療法
硬化療法
硬化剤という薬を注入し、圧迫を加えることで血管を塞ぐことです。圧迫によって血管の内側をくっつけてしまい閉塞させるのです。
下肢静脈瘤の治療は、静脈弁が壊れて正常に機能しなくなった静脈を除去することによって血液の流れを正常化することが最大の目的です。
血管は閉塞すると血液が流れなくなり、自然と周囲の組織に吸収されて最終的にはなくなってしまうのです。
ただ、重症化した場合などはこの治療方法だけでは十分な効果が得られないため、レーザー手術、ストリッピング手術や静脈結紮術などを組み合わせることもよく行われています。その意味ではもっとも基本的な治療方法といってもよいでしょう。外来で受けられる点も大きな特徴となるでしょう。
硬化療法を有効なものにするためにも術後のケアが大事です。
第1は圧迫。
硬化剤を注入し、血管を塞ぐことで逆流をなくすのがこの治療法の最大の目的です。
治療後に圧迫をしっかり行わないと静脈瘤の部分に血液が流れ込んでしまい、再び逆流が生じるようになります。
弾性包帯や弾性ストッキングを使用した圧迫を行っていくことになります。
あまりきつく圧迫を加えるとかえってよくないため、加減も重要です。
第2に適度な運動。
治療を受けたあとは安静にした方がよい印象もありますが、硬化療法においては適度な運動がアフターケアとなります。下半身を動かして血行をよくすることで静脈瘤を早く小さくすることができるます。
無理に運動をする必要はありませんが、同じ姿勢でじっとしているのは避け、血液循環に努めることが重要です。
あとは基本的な部分として入浴の注意点。治療後1日間は入浴は避けます。

3.ストリッピング術(静脈抜去術)
鼠径部の皮膚の切開の大きさは静脈の分枝も縛ることがあるためやや膝周囲の皮膚切開の大きさよりも大きくなることがあります。術後血管を抜いたところに沿って大腿部に内出血が認められることもありますがしばらくすると消えますので心配ありません。
ストリッピング3

4.レーザー治療
当院では施行していないため信頼のあるところにご紹介いたします。
日帰りで手術ができ傷も少なく現在下肢静脈瘤の手術は多くがレーザー治療になってきています。しかし、血管径が太い、蛇行が強い等の場合は従来のストリッピング術などを施行する場合もあります。日帰りで手術ができますが、レーザー治療で血栓ができそれが肺に飛んで肺塞栓などを起こしたということもありますので100%安全というわけではありませんので、手術は熟考してからするようにしてください。

レーザー

 

下肢静脈瘤で日常生活で気をつけること。
1.適度な運動
2.バランスの取れた食事で肥満を予防
3.長時間の立ち仕事や座り仕事のあと足のケア
4.締め付けの強い下着は避ける
5.弾性ストッキングの着用

他の病気が原因でなる下肢静脈瘤
深部静脈血栓症が原因でできる下肢静脈瘤もあります。
こちらは通常の下肢静脈瘤の治療(レーザー、ストリッピング、結紮術、硬化療法など)をすると逆に血液の帰り道がなくなるため下肢が腫脹したりし逆に悪化する恐れもあります。このような場合は弾性ストッキングなどで経過を見ていくしかありません。手術はいたしません。

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